2006 |
12,31 |
«年おさめ。»
「旧年は、お世話に、なりました、っと!」
最後の一枚を書き終えて、俺は筆を置いた。
筆、と言っても、コンビニなんかでも売っている筆ペンだけれど、
パソコンでプリントしたものなんかじゃなく、手書きなのには理由がある。
昨年(といってもまだ今年だけど)お世話になった人たちみんなに同じ年賀状を送っても、
なんだか有り難味に欠ける気がする。
お世話になったんだから、一枚一枚心を込めて書きたいなぁ、と思い、俺は毎年手書きで送るのだ。
一枚一枚、その人に合った内容を考えるのは楽しいし、
これを書いていると、今年ももう終わりか、なんていう風に思える。
大晦日は、炬燵に入って、そばを食べて、歌番組を見て、
テレビと一緒にカウントダウンして、0時少し過ぎくらいに鳴る携帯に対応して、
もう直ぐ日が昇るぞ、というときに布団に入る。
今年もあと数時間で終わり。
新しい年は、笑顔で迎えようと思う。
2006 |
12,29 |
«かなで。»
いつもキミが隣で唄う曲を、
何気なく口ずさむ。
歌詞までちゃんと覚えてるわけじゃないから、ルルルとか、ラララ、という程度だけど、
なんとなく、キミが近くにいるようで。
なんとなく、キミと一緒にいるようで。
2006 |
12,28 |
«大人の味。»
ゴホゴホと咳を繰り返していた俺を見かねたのか、
「あげる」と言われてあいつに渡されたのは、コーヒー味のキャンディだった。
丸みを帯びた四角い形のそれには、「微糖」の文字。
微糖ってことは、そんなに甘くはないんだろう。
甘いものは好きではないから、それは有り難い。
でも俺は、コーヒー味、というのがどうも苦手だ。
匂いや色なんかは好きなんだけれど、味はあまり好きではなかった。
味覚がまだ子供なんだろうか。
付き合いで飲んだりはするけど、それでもまだ一度も飲み干したことがない。
「さんきゅ」と言って受け取ったそれを袋から出して、
少しの間見つめた後、目を瞑って口に入れた。
コーヒー独特の苦味が、口の中に広がる。
やっぱり、俺には合わない味。
いつだったか、コーヒーを飲む大人を、「格好いい」と思ったことがある。
今でもそう思うし、自分も飲めるようになれたらいいなと思うけど、
この調子じゃ当分は無理だろう。
もっともっと大人になったら、平気になるんだろうか。
そんなこと、今はまだワカラナイ。
2006 |
12,25 |
外の風は冷たかったけど、雪は降らなかった。
ちょっとだけ期待していた、ホワイトクリスマス。
最後に雪が降るクリスマスをしたのは、いつだっただろうか。
恋人のいないクリスマスを迎えるのも、もう慣れた。
別に、恋人のいないクリスマスが悪いものじゃないことももう知ってるけど、
家族とも過ごせない一人のクリスマスというのは、やっぱりちょっと味気ない。
街に出れば、クリスマス気分を分けてもらえるのかもしれないけど、
生憎、今日一人で街に出るような根性は持ってない。
部屋にはツリーも飾っていないし、今までの中で、一番クリスマスらしくないクリスマスかもしれない。
家にいても仕方ないと思って、近所のコンビニに足を運んだ。
ケーキでも買おうかと思ったけど、基本的に甘いものが好きじゃない俺は、いかにも甘そうなケーキの類を見て、買うのを諦めた。
甘くないココアと、隣のパンコーナーで、コロッケパンでも買って帰ろう。
ついでに、ロウソクもつけて。
一人きりのクリスマスも、悪くないんじゃないか。
そんなことを思いながら、俺は家へと急いだ。
2006 |
12,20 |
«笑顔。»
僕に出来ることなんて、ほんとに少しなんだ。
泣くな、って声を掛けてやることしか出来なくて、 その言葉でキミを追い詰めて、
余計に、泣かせてしまう。
どうしたらいい? キミの笑顔が見たいのに。
キミが笑ってくれるなら、僕はなんだってするよ。
だから、お願い。
涙を拭いて? いつもの笑顔を、見せてよ。