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遊歩道

なんてことないSSがメイン。 ほんのりBLがあるかもしれないのでご注意くださいませ。
2025
07,09

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2007
01,18

«電車»

電車の窓から見る景色は、毎日、違うように思う。
通る場所はいつも同じだし、急に建物が建ったり、壊されたりなんてことはないけれど、
同じ景色を見たことは、一度もない。

子供の頃、電車に乗ったとき、景色のほうが動いているんじゃないかと思ったことがある。
物凄いスピードで過ぎて行く景色の一部でも見逃さないように、
瞬きするのさえ惜しんで、目を見開いた。

その、一瞬目を閉じた間に、凄い景色を見逃しているかもしれない。
そう思うと、目が乾いて痛くなるまで、開けていたものだ。


今、昔に比べると、電車に乗る機会はぐんと増えたけれど、
外を見る時間は、がくっと減ったような気がする。
乗る時間帯が、混み合う頃だというのも理由の一つだけれど、
外を見ていた時間を、他のことに使うようになったからかもしれない。


昔の頃の景色は、目を瞑っても思い出せるのに、
今の景色は、ちっとも思い出せない。


子供の頃とは随分変わってしまった景色に、少し寂しさを覚えながら、
今の景色も焼き付けようと、俺は外の景色に目を向けた。

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2007
01,10

«晴れ空»

青い空から降る光が、眩しくて目を細めた。

夏の青空も好きだけど、冬の透き通ったような青空も好きだ。
特に理由はない。ただ、好きだと思った。

「雨、止んだね。」

ちょっと前までの雨が、ウソみたいな青空。
でも、雨のあとの空って、結構綺麗だと思う。

「にわか雨だったんだろ。」

たたんだ傘には、滴がまだ残っていて、
歩くたびに、コンクリートに痕ををつける。
夏だったら、直ぐに消えてしまうのだろうそれは、振り返ると、まだ残っている。

それを見て、ちょっとだけ嬉しくなった。
私と、彼が、一緒に歩いてきた証みたいで。

(もう少ししたら、消えちゃうけど。)

傘をたたんだ分、彼との距離が、ちょっとだけ近くなる。
ほんの少しのことだけど、凄く嬉しかった。



2007
01,09

«雨雲。»

どんよりした空。 冬だというのに、どこか生暖かい風が吹いていた。
黒い雨雲は、手を伸ばせば届きそうなくらい、近くにあるように思える。

降り出しそうで、降らない雨。

まるで、さっきから泣くのを我慢しながら歩いてる、こいつみたいだ。
そんなことを頭の片隅で思いながら、「傘持ってくりゃあ良かった」と少し後悔した。

「はっきりしない空、だね。」

「そうだな。」

少しだけ震えた声。 それでも、明るい声にしようとしているのが、ひしひしと伝わってくる。
もう少し気の利いた返事が出来たらいいのに。
けれど、どんな言葉を掛けたらいいのか、わからなかった。

降るか降らないか迷ってるなら、いっそのこと降ってしまえ。
そしたら、雨と、その音に紛れて、こいつは泣けるかもしれない。


(早く降っちまえ。)


そう思いながら、俺は重い空を睨んだ。

2007
01,08

好きだという気持ちだけなら、誰にも負けない自信がある。

今、あの子の隣にいるあいつと比べられたって、絶対に勝つという自信があるほど、
あの子のことが好きだった。

けど、[好き]だけじゃダメなことくらい、わかってるんだ。

僕はあいつみたいに、あの子をあんなに笑わせてあげることは、
きっと出来ない。
悔しいけど、あの子はあいつのことが好きだから。

「好きな子が幸せならそれでいい。」

そんな考え、まだまだ子供の僕には理解出来ないけど、
あの子からあの笑顔を奪うことは、僕には出来ないから。


今は、あの笑顔が見られたら、それでいい。


すぐに忘れるなんて、絶対に無理だから、ちょっとずつ、時間を掛けて、
「あの子が幸せなら」 そう思えるように。

 

 

2007
01,06

正月に買ってもらったゲームのソフトを持って、あいつの部屋に行くと、
あいつは机に参考書とノートを広げていた。

「なに?勉強?」

「まぁ、一応ね。」

勉強なんてしなくても頭いいくせに、と思いながら、「ふ~ん」と返事をした。
俺が来ても、勉強を止める気はないらしい。こいつはそういうヤツだ。
俺が持ってきたのはテレビゲームだし、一人でやったって詰まらないから、
断りを入れずに、ふかふかのベッドに座った。

やることは特にない。
ベッドの横にくっつくように置いてある机に向かう、こいつの横顔を、ただ眺めるだけだ。
時折瞬きしながら、上から下へ目が動くのが分かる。
カリカリ、とシャーペンの細い音が、ちょっとずつ遅くなっていって、
参考書のページが捲られる。

「なぁ、」って俺が呼んだら、こいつは手を止めるんだろうか。
それとも、返事をするだけで、手も休めず、目も俺に向けないんだろうか。

声を掛けてみたい気もする。
けれど、後者だったら、ちょっとショックかもしれない。

声を掛ける、声を掛けない、声を掛ける、声を掛けない。
そんなことを何度か考えている間に、あいつのほうから声を掛けてくるのは、

もう少しだけ、先のこと。

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