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遊歩道

なんてことないSSがメイン。 ほんのりBLがあるかもしれないのでご注意くださいませ。
2025
07,10

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2006
12,17

「でさ、今日アイツさ、体育の時間に―――」

毎日のように見舞いに来てくれるクラスメイトの話を聞きながら、
見舞いの品だと渡された、真っ赤な林檎を見つめた。

白すぎるこの部屋に、よく映える 紅。

それを見ていると、わからなくなる。
俺は今、自分の色を持っているんだろうか。
この部屋と同じように、真っ白になってしまっているんじゃないだろうか。

「で、そしたら先生めちゃくちゃ焦ってさ!」

「なぁ。」

「―ん?なに?」

わざわざ遮るような話じゃない。
コイツの話が終わってから、言えばいいことだ。

でも、今だと思った。

なんでだかは分からない。理由なんて特にない。
でも、今だと思った。


「ありがと。いつも。」


「へ? な、なんだよ、らしくない。」

「だよなー。」

「そうだよ。」

吃驚したじゃん、と笑ったコイツに、心の中でもう一度、

ありがとう。 と呟いた。

 

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2006
12,16

私が書いた日誌に、丁寧に目を通すその横顔を、ひっそりと眺める。
左右に忙しく動くその瞳が、私を捉えることはない。

いつの間にか、手の届かない人になってしまった彼に、
今更想いを伝えることなんて出来ないから。

私はひっそりと、彼への想いを消していくしかない。

積もった雪が溶けたら、水になる。
その水は、どこへ行くのだろう。蒸発してしまう? それとも、土に滲みこんで、なくなっちゃうのだろうか。
ならば、積もってしまった恋心は、溶けてしまったら、どこへ行くのだろう。
心の奥底まで滲みこんだら、なかったことになるんだろうか。

「いつもながら、完璧だな。」

日誌をパタンと閉じた彼は、そう言って薄く笑った。
あの子に向けられている微笑とは明らかに違うそれに、少し切なくなる。


いつになったら、私の恋は、終わるんだろう。


2006
12,13

«憧れ。»

小さい頃憧れたもの、といえば、文句なしにウルトラヒーローだった。
今思えば、なんであんなものに憧れたのか、疑問がないでもないけど、小さい頃の感覚なんてそんなものだ。
ヒーローといえば、無条件で憧れてた気もする。

少し大きくなると、本を読み始めた俺は、探偵を夢見たことがある。
どんな難事件でも、ずばずばと格好良く解決していく探偵を、格好いいと思ったのだ。
普段は冴えないオトコでも、謎解きの時間になれば、人が変わったように光って見える。
それに影響を受けて、自分も冴えないオトコを目指してみたり、ちょっとしたことをすぐに事件にしたりして、
親に良く怒られたのを覚えている。

そして今。
あの頃よりも大きくなった自分は、「憧れ」る職業を持っていなかった。
なにを見ていても、苦労する面を、想像するようになったからだ。
いいな、と思っても、それになりたいと思うようなことが、なくなってしまった。

「大人って悲しー。」

そう呟いた声は、誰に聞かれることもなく、消えていった。

2006
12,12

«スノウ»

「寒いよなあ。」

どんよりとした空を見て、隣を歩くコイツはそう呟いた。

「雨でも降りそうな天気だ。」

黒に近い灰色の雲が、大分近くに見える。
降りだすのも、時間の問題だろう。

「もうちょっと冷えたら、みぞれくらい降りそうだよな。」

「やなこというなよ。明日早朝練習なんだから。」

これ以上冷え込まれてたまるか、と思ってそう言うと、「悲しいねェ?」と笑われた。

「なにがだよ。」

「ちょっと前までは雪が降ると喜んでたのに、いつの間にか雪を鬱陶しく思うなんて。」

「そうか?」

ガキの頃は、雪で遊んだ後のしもやけになったときのカユミとか、
翌日の凍りついた道路とか、そういうのは気にしないでいられたから、偶にしか降らない雪を見て、はしゃいでいたんだろう。
今は別に、雪ではしゃぐような歳でもないし、雪の誘惑に負けた後のことを知ってるから、嬉しいと思ったりはしない。


雪を綺麗だと思うことはあっても。


「大人になるってこういうことかな。」

「そうかもな。」

2006
12,06

一歩ずつ、ゆっくりだけど、確実に前に進む。

周りから遅れをとってる。 だから、俺には立ち止まってる時間なんてない。
追いつこうとは思わない。 だけど、これ以上、離されようとも思わない。

「先に行くぜー?」

自分の少し後ろを歩いていた人が、急にスピードを上げて、俺の前へと進んで行った。
また、抜かされた。 そうは思うけど、自分もスピードを上げようとは思わない。
俺には俺のペースがある。
今からペースを上げたって、途中で息切れするに決まってるんだ。

コツコツ歩けば、きっと大丈夫。
止まることなく、マイペースで行こう。

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