2006 |
12,17 |
«言葉にして。»
「でさ、今日アイツさ、体育の時間に―――」
毎日のように見舞いに来てくれるクラスメイトの話を聞きながら、
見舞いの品だと渡された、真っ赤な林檎を見つめた。
白すぎるこの部屋に、よく映える 紅。
それを見ていると、わからなくなる。
俺は今、自分の色を持っているんだろうか。
この部屋と同じように、真っ白になってしまっているんじゃないだろうか。
「で、そしたら先生めちゃくちゃ焦ってさ!」
「なぁ。」
「―ん?なに?」
わざわざ遮るような話じゃない。
コイツの話が終わってから、言えばいいことだ。
でも、今だと思った。
なんでだかは分からない。理由なんて特にない。
でも、今だと思った。
「ありがと。いつも。」
「へ? な、なんだよ、らしくない。」
「だよなー。」
「そうだよ。」
吃驚したじゃん、と笑ったコイツに、心の中でもう一度、
ありがとう。 と呟いた。
たまには弱気になるときもあります。
別に今僕がこんなってわけじゃないですけどねー。
でも、言葉にできるうちにしておかないと、
いつ、言えなくなるかわかんないですからね。
自分が言えたとしても、
それを伝えたい相手は、いついなくなるかわからないですからね。
言葉に出来るうちに、伝えておこうよ、と思いました。
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